STUDIO TACHIBANA

金属の手触りを聞く

金属と対話するようにして橘智哉さんの作品は生み出されます。素材とたわむれることによって生まれる作品は、装飾が幾重にも重ねられ『橘バロック」とでも呼べるような独特のスタイルを持ち合わせています。橘さんは制作過程で新しく発見することや意外性をスリルとして楽しんでいるそうです。
バイク等のエンジンを改造した爆音楽器「SOUND OF ENGINE」もまた、そういう中から生みだされました。環境にやさしいエンジンが開発される流れの中で、この作品について橘さんはあえてこう言います。
「エンジンを前にするとドキドキしてしまいます。いっそ回転運動など無視して、私がドキドキする部分をクローズアップしようとこの作品を制作しました。」 「それはエンジンというもののなかで爆発が起こっているということ。それに伴い、本来はない方が良い金属が赤熱するほどの熱や、振動、騒音、むせるようなにおいそのものに私は魅力を感じています。」
大小さまざまな機械道具がそろう海の見えるスタジオでは、立体彫刻から什器、アクセサリーやインテリア素材まで、さまざまなスタイルや用途の作品が制作されています。しかし、一貫して底辺に流れているのはエンジンのような激しい鼓動と、これまでにないものを生み出そうというロック魂。一見、寡黙に見える表情の裏に秘めた熱さを持ちあわせているアーティストです。

橘 智哉 さん
  • ロゴ
  • webサイト

(制作:2014年6月~)

アーティストの想いをロゴやウェブサイトで表現する

みかんの先祖にあたる“橘”。常緑木で葉は年中枯れずに、実はよい香りを放つところに名前の由来があるそうで、そこから不老不死の力を持った霊薬として日本古来から言い伝えられています。お正月の鏡餅の上にあるダイダイと呼ばれる“橘”、お雛様に飾られている左近の桜と対峙する“右近の橘”、マーマレードとして食卓にならぶ“橘”と、生活にある身近な存在です。由緒あるものとして家紋にも多く登場します。
伝統工芸の手法を修得しつつも新しい世界へ展開させていくという、常に青々としているアーティスト橘さんの思いと作品は、まるで“橘”そのもののように感じました。小細工はせず単刀直入に丸という力強い形状を“橘”とし、文字も日本伝統的で文様的な書体で表現しました。ウェブサイトでは、伝統工芸的な世界と、伝統を壊すかのような強烈なロック魂を感じる「SOUND OF ENGIN」の世界をあえて相対的な位置づけにすることでお互いの必要性や魅力を感じていただけるようなウェブサイトを目指しています。
橘さんの世界感をぜひ、ご覧ください。